色の抜けたデニム、表面が擦れたスウェット、少しくすんだ赤。ANCELLM(アンセルム)の服には、きれいに整えるだけでは生まれない表情があります。それでいて、古着の再現だけに収まらないのは、色と加工に加えて、着たときの形まで考えられているから。
「最近よく名前を聞くけれど、どんなブランド?」という方に向けて、成り立ちと注目される背景、実際の3商品を紹介します。加工の強さだけで判断せず、素材とシルエットの関係を見ると、アンセルムの面白さが伝わりやすいと思います。
ANCELLMとは? 岡山から生まれた日本のブランド
アンセルムは、デザイナーの山近和也が2021年に始めたブランドです。日本ファッション・ウィーク推進機構によるブランド紹介では、大学卒業後に文化服装学院で学び、産地や国内ブランドで企画・生産を経験して独立した歩みが紹介されています。
公式のコンセプトは「視点を変えた経年変化の提案」。時間がたって現れる色や風合いを、あらかじめ手を加えることでデザインし、そこから着る人それぞれの変化へつなげていく考え方です。
ましゅの視点では、アンセルムは「新品らしく見えない服」という説明だけでは足りません。最初から複雑な色や質感を持ちながら、その後も自分の生活に馴染ませていける。その余地に魅力を感じます。
歴史と背景。児島のものづくりを、自分の表現へ
QUIのデザイナーインタビューで山近は、倉敷出身であることや、児島の企画会社でデニムの生産・加工などに携わった経験を語っています。服を描くだけでなく、産地でどう加工し、どう形にするかを知っていることが、ブランドの土台になっています。
2025年には、2026年春夏コレクションで初のランウェイショーを開催。翌2026年はブランドの5周年にあたり、服だけでなく、その背後にある技術やつくり手にも目を向ける機会となりました。
歴史の長いワークウェアやヴィンテージから着想を得ながら、現在のバランスで組み直す。アンセルムを知るときは、古い服に似ているかどうかよりも、どこに新しい色や輪郭が加わっているかを見たいところです。
なぜ人気? 注目される背景を3つの視点から
1. 色落ちを再現するだけでなく、色を重ねてつくる
アンセルムらしさが伝わりやすいのは、デニムやスウェットの表面です。前述のQUIの取材では、自然な着用で生まれるヒゲや色落ちをそのまま再現するのではなく、通常とは異なる位置に加工を入れる発想や、水彩のように色を重ねる考え方が語られています。
同じ青でも、白く抜けた部分や、別の色が重なる部分があると、単色とは違う奥行きが生まれます。ましゅの視点では、こうした表情がある一本なら、合わせるトップスは無地でも十分。装飾を増やすより、素材の見え方で服装に変化をつけたい人に響くのだと思います。
2. 加工だけでなく、裁断とバランスを考えている
Hypebeastの山近へのインタビューでは、裁断、バランス、加工をブランドの強みとして挙げています。オリジナルの素材も、表面の風合いに加えて、ドレープやシルエットを考えながら開発していると説明しています。
例えば、幅のあるフーディでも丈を長くしすぎない、ブルゾンの袖にたまりをつくる、といった形の違いは、全身の印象に直結します。加工の接写だけで選ばず、肩から裾までの線を見ることが大切です。
3. ランウェイや共同企画で、知る入口が増えている
人気の広がりを考えるうえで、実際に確認できる動きもあります。2025年3月には、YOKEとバーニーズ ニューヨークとの共同企画が登場。YOKEの服にアンセルムの加工を組み合わせるなど、それぞれの得意な表現が交わる取り組みでした。
さらに2026年8月に始まった「BARNEYS NEW YORK by」では、最初の協業ブランドに選ばれています。バイヤーは公式インタビューで、山近の視点と、それを素材や加工へ落とし込む技術を評価しています。
こうした取り組みは、アンセルムが専門店やファッションの現場で注目されていることを示します。一方、これだけで売上順位や市場全体での人気度までは分かりません。話題性を入口にしつつ、最後は色と形が自分の服に合うかで選びたいと思います。
実際の服で知る、アンセルムの特徴
ここでは公式に掲載された3商品を、ものづくりを知る具体例として紹介します。価格は2026年11月5日に確認した税込の掲載額です。紹介した色・品番の情報であり、別シーズンや別仕様にも同じ価格・素材が当てはまるわけではありません。
1. #08 PAINTED MIDDLE STRAIGHT 5P DENIM PANTS
INDIGOの公式商品ページに掲載されている、綿100%・日本製のデニムです。品番はANC-#08-26AW-B、価格は46,200円。手擦りによるフェードに染料を重ね、乾燥の工程を挟みながらペンキ加工を加えています。
形は、ブランドのコレクション内ではやや細めのストレート。例えばサイズ1の公式寸法は、ウエスト81cm、股下71cm、ワタリ34cm、裾幅24.5cmです。「細め」という説明を一般的なスリムパンツと同じ意味で捉えず、実寸から確認すると選びやすくなります。
ましゅの視点では、まず白や黒の無地トップスに合わせて、デニムの色を主役にしたい一本。裾をどれくらい靴に重ねるかでも表情が変わるため、加工と同じくらい丈のバランスを見たいと思います。
2. ZIP UP HOODIE
REDの公式商品ページで紹介される、スウェットとサーマルを重ねた綿100%のジップフーディです。品番はANC-STD-CT07、日本製、41,800円。1960年代頃のヴィンテージを参考に、手作業で表面に加工を施し、内側の生地がのぞくつくりになっています。
この一着は、穴や擦れだけでなく、二重構造のコントラストが見どころです。サイズ2は着丈65cmに対して身幅64.5cm。幅を取りながら丈を抑えた比率なので、普段のサイズ番号だけで決めず、手持ちのパーカーと比べたいところです。
赤を取り入れるなら、ほかの服の色数を抑えると組み合わせを考えやすそうです。デニムまで強い加工でそろえるより、最初は落ち着いたパンツを合わせ、フーディの表情がどのくらい見えるかを確かめたいと思います。
3. AGING KIMONO BLOUSON
REDの公式商品ページにある、着物の構造を取り入れたブルゾンです。品番はANC-JK100、日本製、57,200円。表地は綿73%・ナイロン27%、裏地は綿55%・キュプラ45%です。
肩の落ち方と袖のたまりに加え、前のプリーツやストラップ、パネルの構成で立体感をつくっています。高密度の綿ナイロンには加工を施し、縫い目周辺に現れるしわも表情の一部に。ダブルジップなので、前を開ける位置によって見え方を変えられます。
サイズ2は着丈70cm、裄丈93.5cm、身幅67.5cm。身幅だけでなく、袖と肩の関係まで確認したい形です。ましゅの視点では、アンセルムを加工デニムだけのブランドと思っていた方に、ぜひ見てほしい一着です。
公式映像で見る、2026年秋冬のシルエット
静止画では素材の表面、ランウェイでは動いたときの裾や袖に注目してみてください。下の映像は、Rakuten Fashion Week TOKYOの公式ブランドページにも掲載されている2026年秋冬のショーです。本文の3商品の着用や在庫を一律に示す映像ではありません。
写真でゆっくり比較したい場合は、公式の2026AWルックも参考になります。全身のバランスを見てから商品写真へ戻ると、単体では大胆に感じる色や加工の取り入れ方も考えやすくなります。
サイズと手入れ。加工の印象だけで決めない
アンセルムは、同じサイズ番号でもアイテムによって形が異なります。パンツはウエストだけでなく股上・ワタリ・裾幅、トップスは着丈と身幅に加えて肩幅や裄丈を確認しましょう。身長だけからサイズを断定するより、普段よく着る服を測って比べるのがおすすめです。
手作業を含む加工のある製品は、商品ごとの説明と実物の状態も確認したいところです。オンラインの写真とまったく同じ色の出方を期待するのではなく、擦れや色の濃淡を含めて選べるかを考えておくと、購入後の印象の違いを減らせます。
洗濯方法は、綿100%だからといって一律には判断できません。今回の3商品の公式ページでは、具体的な洗濯手順を確認できなかったため、実物の洗濯表示と販売店の案内を優先してください。加工や裏地のある服を、普通の無地のTシャツと同じように扱わないことが大切です。
ANCELLMはどこで買える?
商品名や素材を調べる入口は、ANCELLM公式オンラインストアです。紹介したデニムとREDのフーディは確認時点で公式完売でしたが、色・品番・販売店によって状況は異なります。価格だけで比較せず、探している仕様と一致するか確かめましょう。
試着先を探すなら、公式の2026AW取扱店一覧が便利です。東京のANC store、伊勢丹メンズ館、WISM、1LDK apartments.、バーニーズ ニューヨーク六本木店などが掲載されています。取扱店でも全商品がそろうとは限らないので、見たい品番とサイズは来店前に確認するのが確実です。
また、公式通販の取引条件では、注文間違いや好みに合わなかったといった購入者都合の交換は受け付けない旨が案内されています。サイズに迷う場合は、注文前に寸法や交換・返品の条件を確認しておきましょう。
まとめ。色と形に、自分の時間を重ねる服
アンセルムは、岡山のものづくりを背景に、経年変化を新しい視点でデザインするブランドです。人気を考えるうえでは、ランウェイや共同企画といった動きに加えて、染めや加工、裁断を組み合わせた服そのものに目を向けたいと思います。
ましゅの視点では、タイムレスな服は、必ずしも装飾が少ない服だけではありません。少し癖のある色や形でも、自分の服装に馴染み、繰り返し手に取りたくなるなら、長く付き合う候補になります。まずはデニム、フーディ、ブルゾンのどの表情に惹かれるか。素材とシルエットから、自分に合う一着を探してみてください。
情報確認日:2026年11月5日。価格・在庫・取扱店は変更される場合があります。本記事は公式情報とデザイナーへの公開インタビューに基づくブランド紹介で、筆者による所有・着用レビューではありません。

