デムナの衝撃と、ピッチョーリ最後のバレンシアガ。名作から考える二つの個性

白いシャツと白いパンツのルック。 インポート
Summer 27(2027年春夏)、Look 01。白いシャツと白いパンツのルック。|画像出典:Balenciaga公式サイト

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正直、デムナが凄すぎた。異端すぎた。そのあとを引き継いだピエールパオロ・ピッチョーリの初期のコレクションは、自分には微妙でした。デムナがまだ抜けきっていないように感じたからです。

でも、最後のコレクションは本当によかった。難しいことだとは思うけれど、最初からあの感じを出していたら、もっと違う展開になっていたのでは。そう考えてしまいます。

これは、売上や退任の理由についての断定ではなく、服を見た個人の感想です。今回はデムナ期に生まれた代表作と、ピッチョーリのSummer 27を並べながら、その感覚を具体的な形から考えます。人事の時系列や就任・退任時の周囲の反応は、就任・退任の反応をまとめた記事にまとめています。

デムナの異端さを、四つの名作から見る

デムナのバレンシアガを振り返ると、大きな服や厚いソールという言葉だけでは足りません。靴の底をどこまで大きくできるか。バッグの輪郭だけで、服と同じくらい強い印象を残せるか。見慣れたものの比率を動かす仕事が、日常で使える商品として残っています。

ここではその違いが見えやすい四つを選びました。「名作」はこの記事の選び方で、公式なランキングではありません。公式写真は各シリーズの形を見るための作例。楽天の商品とは、色、素材、サイズが異なるものもあるため、購入欄では品番を分けて記載します。

Triple S:ソールが靴全体の主役になる

ベージュのBalenciaga Triple Sスニーカーの側面。重なった厚いソールが見える
Triple S。写真はベージュの現行公式掲載モデル(524039 W2FW1 9700)。紹介する楽天商品の黒(536737 W2FA5 1000)とは仕様が異なる。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ

Triple Sは、デムナ期の2017年秋冬メンズで登場したスニーカー。ランニング、バスケットボール、トラックシューズのソールを重ねる発想から生まれ、2017年9月21日に発売されました。横から見ると、靴底が単なる土台ではなく、靴全体の輪郭を決めているのが分かります。 出典

大きさだけなら、ほかにも厚底の靴はあります。Triple Sで目に入るのは、色の切り替えや段差まで含めた密度。すっきりした服に合わせても、足元だけで印象を変える力があります。デムナの衝撃を商品から振り返る、分かりやすい入口です。

楽天掲載例は、メンズのブラック、536737 W2FA5 1000。公式作例のベージュのウィメンズとは別仕様です。2017年当時の初期生産品という意味でもありません。画像を押すと、インポートセレクトmuseeの販売ページを開きます。

3XL:大きな靴を、さらに横へ広げる

黒いBalenciaga 3XLスニーカーの側面。横へ張り出すソールと靴を巻く紐
3XL。写真は黒の現行公式掲載モデル(734734 W3XL1 1010)。紹介する楽天商品のSummer Mesh(734734 WTRMH 2200)とは仕様が異なる。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ

3XLシリーズの初出はSummer 23。Triple Sと並べると、同じ「大きなスニーカー」でも違いがあります。3XLでは横に張り出すソールや、メッシュを覆うパーツの線に目が向きます。高さだけでなく、足元が占める面積を変えるようなデザインです。 出典

靴だけを眺めると極端でも、長いパンツの裾から出る部分を考えると見え方が変わります。どこまで靴を見せるかで全身の比率が変わる。その大きな振れ幅も、デムナ期の作品を見返す面白さです。

楽天掲載例は3XL SUMMER MESH、734734 WTRMH 2200、TAUPE。公式写真のブラックとは別仕様です。商品名の「SUMMER」は、ピッチョーリのSummer 27を意味しません。こちらもmuseeの商品です。

なお、公式写真で靴の先端などを巻く追加の紐はスタイリング用です。公式は着用前に外すよう案内しています。実際に履く際は購入する商品の説明を確認してください。 3XL公式商品説明

Hourglass:服の曲線を、バッグの底に残す

黒いクロコダイル型押しカーフスキンのBalenciaga Hourglass Small。湾曲した底と金色のB金具
Hourglass。写真はクロコダイル型押しカーフスキンのSmall。紹介する楽天商品のXS・ベルベット(592833 2PPPT 1000)とはサイズと素材が異なる。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ

Winter 2019に登場したHourglassは、底の中央が持ち上がる曲線が印象的なバッグ。公式の解説は、ジャケットの砂時計型のシルエットをバッグへ移したものと説明しています。丸い持ち手、上部のふくらみ、下端のカーブと、形の変化が一つの小さな物に集まっています。 出典

スニーカー二足のあとに見ると、デムナの仕事を「大きくすること」だけではまとめられないと分かります。小さなバッグでも、外側の輪郭がはっきりしている。装飾の数よりも、シルエットそのものを記憶するタイプのデザインです。

楽天掲載例はXSサイズのブラック・ベルベット、592833 2PPPT 1000。公式写真のスモールとはサイズと素材が異なります。ブランドショップ リペイは新品として掲載していますが、保存袋についての注意書きもあるため付属品欄まで確認してください。

Le Cagole:金具とチャームまで、一つの表情になる

黒いBalenciaga Le Cagole XSショルダーバッグ。スタッズ、タッセル、ハート型ミラー
Le Cagole XS。アリーナラムスキンにスタッズやタッセル、ハート型ミラーを重ねた黒の公式商品写真(671309 1VG9Y 1000)。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ

Pre-Fall 2021に登場したLe Cagole。XSでは、三日月のような形にスタッズ、ベルト、ファスナー、ハート型ミラーが重なります。整った箱型のバッグとは違い、小さな要素がいくつも視線を引きつけます。硬い金具と柔らかい革が同居しているところも特徴です。 出典

その背景には、デムナ以前からあるMotorcycle/Cityの系譜があります。過去のバッグをゼロからの発明として扱うより、受け継いだディテールをどんな輪郭へ組み替えたかを見ると、デムナの仕事が具体的になります。 出典

Hourglassが輪郭を強く見せるのに対して、こちらは表面の情報量が印象をつくる。ひとりのデザイナーの時代に、これだけ違う魅力の商品がある。デムナを振り返るときに、靴だけで終わらせたくない理由です。

楽天掲載例はLe Cagole XS、671309 1VG9Y 1000、ブラック。公式作例と型番・色が一致します。drawersは並行輸入品・新品として掲載。ハート型ミラーと小物入れが付くXSで、長方形のMini W/CHとは別モデルです。

ピッチョーリの初期を、正直どう見ていたか

自分には、初期のピッチョーリは正直、微妙に感じられました。才能がないという話ではなく、デムナのあとに来た新しいバレンシアガとして見たとき、前の時代が抜けきっていないように感じた、ということです。

Summer 26の黒いドレスとWinter 26のボリュームのある黒いルックを、あらためて並べてみます。黒という色は共通していても、肩から落ちる線、胴まわりの丸み、脚へ向かう量感は違います。これは作例の比較で、二枚だけで各コレクション全体を評価するものではありません。

黒いVネックのノースリーブドレスとサングラス。
Summer 26(2026年春夏)、Look 01。黒いVネックのノースリーブドレスとサングラス。|画像出典:Balenciaga公式サイト
黒いレザーの丸い上半身から細いスカート状のシルエットへつながるWinter 26のルック
Winter 26(2026年秋冬)、Look 01。黒いレザーのブルゾンとスリット入りスカート。|画像出典:Balenciaga公式サイト

就任時のケリングの公式発表は、ピッチョーリのクチュールの技術を評価しながら、デムナが築いた十年間にも触れていました。引き継ぐものと、変えるもの。その両方が求められる人事だったことは、当時の説明からも読み取れます。 出典

VogueのSarah MowerによるWinter 26評も、ブランドの既存の若い顧客層と、ピッチョーリの持ち味との間にある難しさを指摘しています。ただし、これは媒体の批評です。自分の「デムナが抜けきっていない」という感想と、完全に同じ意見として扱うつもりはありません。 出典

最後によかったのは、Summer 27

ここでいう「最後のコレクション」は、2026年10月1日に発表されたSummer 27、2027年春夏のランウェイです。退任発表は同年11月5日。この記事では、この公開時系列に基づいて「退任前最後のランウェイ」と呼んでいます。 公式告知メールの保存記録/公式Summer 27/退任の公式発表

Summer 27で公式に説明されているのは、クチュールの技法をシャツやデニム、Tシャツなどの日常着へ移す考え方です。特別な日のドレスだけで技術を見せるのではなく、普段見慣れた服のつくりを変える。前に出るのが、その手の仕事でした。 出典

ここからのルックは、最後のコレクションを見直すために選んだ作例です。どれか一着を実際に着たレビューではありません。写真で見える色、輪郭、布の重なりを中心に見ていきます。

白い服。色を抑えても、形が残る

白いケープとフラワーベルト、白いデニムを合わせたSummer 27 Look 02
Summer 27 Look 02。首元で留めた白いケープに、花のモチーフのベルトと白いデニムを合わせて。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ

冒頭に掲載したLook 01では、白いシャツのウエストを絞り、その下へ布が大きく広がっています。シャツという身近な服なのに、腰から後ろ裾にかけて彫刻的な量感がある。この節のLook 02は、首元で留めたケープと白いパンツ。色をそろえても、上半身をどう包むかで違いがはっきりします。

淡い色のジャケットと幅広のパンツ、結び目のあるバッグを合わせたSummer 27 Look 04
Summer 27 Look 04。淡い色のジャケットとたっぷりしたパンツ。ゆとりのある身幅と、流れる布の線が見える。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ
首元を覆う白いトップスと揺れるフリンジ状のスカートを合わせたSummer 27 Look 08
Summer 27 Look 08。上半身の大きな面と、裾で揺れるフリンジ状の表情。白の中に異なる質感と動きを重ねる。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ

続くLook 04は、淡い色のジャケットと幅のあるパンツ。Look 08では、首元を覆うトップスの大きな面と、裾のフリンジ状の表情が重なります。細かい装飾を探す前に、布が身体から離れる場所と、動きが出そうな場所を見比べてみてください。

鮮やかな色。大きな服に、軽さをつくる

顔を囲む高い襟の鮮やかな青いトップスとクリーム色のカーゴパンツのSummer 27 Look 11
Summer 27 Look 11。顔を囲む高い襟の青いトップスに、量感のあるクリーム色のカーゴパンツを合わせた。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ
鮮やかなピンクのシャツとクリーム色のワイドパンツ、青いバッグのSummer 27 Look 12
Summer 27 Look 12。鮮やかなピンクのシャツ、クリーム色のワイドパンツ、青いバッグ。色の強さを普段着の形へ落とし込む。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ

Look 11の青は、顔を囲む高い襟までひと続きになっています。ボトムはクリーム色で、横に広がる分量があります。Look 12はピンクのシャツにクリーム色のワイドパンツ、手元には青いバッグ。大きな色面が並ぶと、同じ量感でも黒一色とは違う軽快さが出てきます。

ピンクや青を使ったから、ただちにピッチョーリらしいと決める必要はありません。シャツの襟の開き、肩の落ち方、パンツの幅まで合わせて見ると、色だけを足した話ではないことが分かります。

見慣れた服を、別の輪郭にする

縦の隙間を生む黒いトップスとレース状のショートパンツのSummer 27 Look 16
Summer 27 Look 16。黒いトップスの縦に開いた表情と、レース状のショートパンツ。黒にも軽さと肌の余白をつくる。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ
斜めの透かしと不均一な裾を持つ黒いノースリーブドレスのSummer 27 Look 20
Summer 27 Look 20。斜めの透かしと流れる裾を持つ黒いドレス。重さを足さずに、身体と動きを際立たせる。 画像:Balenciaga公式サイト。 公式掲載ページ

黒のLook 16と20では、肌が見える隙間に注目。16はトップスの縦の開きとレース状のショートパンツ、20は斜めに入る透かしと不均一な裾が印象的です。黒を重く見せるだけでなく、光が通る場所をつくることで表情を変えています。

ここに並べた白、青、ピンク、黒は、それぞれ別の見方を誘います。日常的なシャツやパンツから、よりドレッシーな服まで、そのつくり方を行き来できる。最後のコレクションがよかったという感想を、写真であらためて考えるための八つの作例です。

新しい靴とバッグまで見ておきたい

Summer 27の公式説明には、新しいLounge Sneaker、Wave Thong Sandal、Dahlia Muleという靴の名前が出てきます。柔らかく、身体に寄り添う方向のつくりとして説明されている点は、デムナ期の大きなスニーカーと比べるときの手がかりになります。 出典

バッグではNodo、Silhou Toteが紹介され、革を手で形づくり、ドレープさせるという説明があります。硬い輪郭を固定するだけでなく、柔らかい素材の動きをかたちにする。服と小物を、同じ考え方で見ていけるところに注目したいです。 出典

ただし、今回確認した楽天市場の商品には、これらのSummer 27新作と正確に一致すると裏付けられるものはありませんでした。見つからないことだけで未発売とは断定できませんが、旧作を「最後のコレクションの名作」としてリンクすることは避けています。販売商品との対応が確認できるまでは、Balenciaga公式コレクションページでルック全体を見てください。

最初からこの感じだったら、という気持ちは残る

最後のコレクションを見たあとだと、「最初からあの感じを出していれば、うまくいったのでは」と思ってしまいます。これは、答えの出た経営分析ではありません。もっと早くこの方向のピッチョーリを見たかった、という自分の感想です。

Summer 27の公式説明は、直前の55th Coutureで用いた技法を日常着へ移したとしています。そう考えると、最後に見えたものが、途中の試行錯誤を経て生まれた可能性もある。完成した姿を見てから「最初にやればよかった」と言う難しさもあります。 出典

作品が好きかどうかと、ブランドが商業的に成功するかどうかは別の問いです。退任声明は詳しい理由を明らかにしていません。だから、最後の服がよかったという感想を、売れたはず、契約が続いたはずという事実に置き換えずに残しておきたいです。 出典

デムナの異端さに惹かれたことと、最後のピッチョーリをよかったと思うことは、両方あっていい。誰が勝ったかを決めるより、どの服を見て気持ちが動いたのか。その違いを写真で確かめながら、もう少し見ていたかったバレンシアガを振り返ります。

楽天の掲載商品を選ぶ前に

紹介した楽天商品は、デムナ期に生まれたシリーズを現在の販売例から見るためのものです。初出時のランウェイ着用品や、当時生産されたアーカイブ個体だと確認したわけではありません。価格、サイズ別在庫、送料、返品条件は変わります。購入時には販売ページの最新表示を確認してください。

特にスニーカーは、メンズ/ウィメンズの区分やサイズ換算、素材が別なら、同じモデル名でも条件が変わります。バッグもXSとSmall、革とベルベットでは容量や扱い方が異なります。写真の雰囲気だけでなく、自分が選ぶ一品の品番まで見ることが大切です。

資料・商品リンク確認日:2026年11月8日。写真はBalenciaga公式公開画像と楽天アフィリエイトの商品画像です。生成画像は使用していません。

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