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UNDERCOVERのコレクションには、蜂の巣のように広がるスカートや、ウエストを絞った服に大きな袖を組み合わせた姿が登場します。見慣れた上着を、ファスナーで分解してしまうことも。日常の服に物語や少し不穏な表情を持ち込む、そんなブランドの面白さをたどります。


冒頭は2017年秋冬《But Beautiful III UTOPIE》の2作品。銀色と黄色は硬質で明るく、赤紫と淡いピンクは華やかで柔らかな印象です。毛足の長い袖と、細かな空間を作るスカートは共通していますが、上着の長さが違うだけでも全身の見え方が変わります。
最終確認:2026年11月4日。ブランド公式資料、美術館の解説、公開されたプレス資料を参照しています。実際に所有・着用したレビューではなく、資料と写真の観察による紹介です。
UNDERCOVERは、どんなブランド?
UNDERCOVER(アンダーカバー)は、デザイナーの高橋盾(たかはし・じゅん)が、文化服装学院在学中の1990年に始めた日本のブランドです。東京のストリートカルチャーから出発し、2002年に発表した2003年春夏コレクションでパリのウィメンズ・ファッションウィークに初参加しました。UNDERCOVER公式の年譜。
ストリートやパンクの要素に、ロマンティックな装飾や舞台衣装のような造形が重なる。シーズンごとの物語に合わせて、服の姿も変わっていきます。活動は写真や映像、ドール、絵画にも広がっています。2015年に回顧展を開いた東京オペラシティ アートギャラリーも、その幅広い活動に注目しています。「LABYRINTH OF UNDERCOVER」展の解説
黒い服にも、ファスナーの位置、毛足、裏地など、プリント以外の見どころがあります。大胆なショーピースと、普段に着るコートやジャケット。その両方がUNDERCOVERです。
高橋盾とUNDERCOVERの歩み
- 1990年:文化服装学院在学中に、友人とUNDERCOVERを始める。
- 1994年:1994〜1995年秋冬を、東京でショー形式により発表。
- 2002年:2003年春夏コレクションで、パリのウィメンズ・ファッションウィークに初参加。
- 2009年:ピッティ・イマージネ・ウオモで、2010年春夏を発表。メンズのみのショーはこのときが初めて。
- 2015年:設立25周年の回顧展を東京オペラシティ アートギャラリーで開催。
- 2016年:シーズンレスのライン、the Shepherd UNDERCOVERを開始。
- 2024年:2024年春夏ウィメンズの作品が、メトロポリタン美術館の展覧会に登場。
上記は公式年譜をもとにした年譜です。初のパリ・コレクションを発表したのは2002年で、服のシーズン名は2003年春夏。この二つの年が並ぶのは、発表年とシーズンが異なるためです。
2026年11月時点、公式サイトは高橋盾をデザイナーとして紹介しています。2027年春夏メンズと2027年春夏ウィメンズが掲載され、メンズとウィメンズそれぞれのコレクションを見られます。
知っておきたいコレクションと、見るポイント
1998年秋冬 EXCHANGE:服をパーツに分けて考える
EXCHANGEは、襟、袖、裾などをファスナーで分解し、組み替える発想を示したコレクションです。2025年のLevi’sとの協業では、この1998年秋冬のアイデアを参照し、Type IIのトラッカージャケットに取り外し可能な構造を取り入れています。Levi’s × UNDERCOVERの公式説明。
EXCHANGEでは、ファスナーが飾りではなく、服を組み替えるための構造になっています。中古を探すなら、年代や品番に加え、襟や袖などのパーツが揃っているかも大切です。異なる年代のパーツ同士が交換できるとは限りません。
2003年春夏 SCAB:パリでの始まりをたどる
最初のパリ・コレクションに当たる2003年春夏は《SCAB》。東京オペラシティの回顧展のショー映像上映リストにも、このシーズン名で記録されています。2025年のLevi’sとの協業では、2003年春夏に由来する三角形の刺繍がデニムに使われました。回顧展のショー映像上映リスト、Levi’sとの協業資料。
販売文の「SCAB風」は、2003年春夏の服だという意味ではありません。当時の服を探すのか、後年に同じモチーフを使った服を探すのかで、候補も価格の見方も変わります。
2004年秋冬 BUT BEAUTIFUL:ぬいぐるみと服の距離を縮める
2004〜2005年秋冬は、ぬいぐるみ作家アン・ヴァレリー・デュポンの作品と、パティ・スミスのスタイルから着想したコレクションです。ブランドの2025年の説明では、高橋自身が過去を振り返る中で私的なベストに挙げた作品群とされています。UNDERCOVER公式の回顧と制作記録。
甘い装飾があっても、ただかわいらしく整った服には見えない。公式の2004年秋冬ルックには、そんな不思議な表情があります。「but beautiful」の名前は後年のコレクションにも使われていますが、服の造形はシーズンごとに異なります。
2017年秋冬 UTOPIE:細い胴と、大きな袖・裾を対比する
冒頭の2作品は、2017年秋冬《But Beautiful III UTOPIE》から。ウエストを絞った上半身に、毛足の長い大きな袖を合わせ、スカートにはハニカム状の凹凸を作っています。細い胴と大きく広がる袖・裾の対比が、強く目に残るシルエットです。
銀色の上着は前が短く、黄色いスカートの上端が見えています。一方、赤紫の上着は前が長く、淡いピンクのスカートへつながる部分を覆っています。同じシリーズでも、色と上着の丈によって全身のバランスが変わるのが面白いところです。
掲載写真は、Vancouver Art Galleryが2023年に開いた「Fashion Fictions」展で、2017年秋冬の作品を展示したときのものです。Vancouver Art Galleryの展覧会資料
2024年春夏 Deep Mist:薄い布と花の表現を見る
2024年春夏ウィメンズの題名は《Deep Mist》。同シーズンの作品は、メトロポリタン美術館の2024年展「Sleeping Beauties: Reawakening Fashion」にも登場しています。UNDERCOVER公式の2024年春夏、メトロポリタン美術館の展覧会資料。
美術館の作品説明によると、ドレスには3Dプリントの透明な樹脂が使われています。その中にシルク製のバラや葉、蝶を収め、チュールを重ねたつくり。服の内側に小さな風景があるような作品です。
花や蝶を使った幻想的な表現に惹かれたら、同じシーズンの公式ルックもぜひ。日常に着る服を探したい方へ向けて、後半では品番付きの商品も紹介します。
公式映像で見る、2025年秋冬の制作
35周年の公式ドキュメンタリーは、2025〜2026年秋冬《but beautiful 4…》の制作を追ったものです。以下のパリ編では、制作やショーの準備を紹介しています。完成した服の写真と合わせて楽しめる映像です。
映像が表示されない場合は公式の制作記録ページへ。冒頭の2017年秋冬作品とは異なるコレクションを扱った映像です。
UNDERCOVER、the Shepherd、Undercoverismの見分け方
UNDERCOVER:まず基準にしたい本体のコレクション
公式サイトでは、UNDERCOVERのメンズとウィメンズを分けて紹介しています。ショーの作品から日常着、他社との協業品まで、展開する服の幅は広め。同じブランドでも、商品ごとに素材や仕様が異なります。
ライダースジャケットも、その一つ。公式のsacaiとの協業説明では、ジップアップのライダースをUNDERCOVERの代表的なアイテムとして挙げています。sacaiとの協業アーカイブ
the Shepherd UNDERCOVER:素材や細部から選ぶ日常着
the Shepherd UNDERCOVER(ザ・シェパード アンダーカバー)は2016年に始まったラインです。公式は2026年春夏の紹介で、高橋がその時に着たい大人の服をテーマに、素材と快適さを重視していると説明しています。開始年の公式年譜、the Shepherdの2026年春夏の紹介。
強いプリントよりも、生地や襟、縫い目の表情を楽しみたいときはこちら。2026年春夏にはリネンやコットンも使われています。
Undercoverism:中古では、名称だけで年代を決めない
Undercoverismという名称は、過去の商品や資料で目にします。2021年には、新たなメンズラインとして2021〜2022年秋冬《Neoboy》を発売するプレス資料が公開されました。2021年のブランド発表資料(協業作家の公式サイト掲載PDF)。
この発表は2021年当時のもので、2026年現在のライン展開を示すものではありません。中古品の年代を調べる手掛かりになるのは、首元のタグ、品質表示、品番。「UNDERCOVER」「Undercoverism」「the Shepherd」は、同じ名前の言い換えとして扱わないほうがよいでしょう。
黒い服から選ぶなら:公式掲載の3型を比べる
ここからは、2026年11月4日に公式ページで確認した黒い服を3型紹介します。ロングジャケット、ダウン入りのコート、the Shepherdのジャケット。それぞれ丈と素材に違いがあります。在庫は各商品の販売ページをご覧ください。
UC2F4105:ウールパイルの黒いロングジャケット
ウールパイルを使い、裏側にボアを配したロングジャケットです。前にはパッチポケット、袖口には切りっぱなしの仕上げ。素材はパイル部分がウール100%、基布がポリエステル100%と、部分ごとに分かれています。UC2F4105の公式仕様
毛足のある黒い生地と、切りっぱなしの袖口が特徴です。大きな柄がなくても、生地の表情を楽しめるロング丈。公式サイズ2の着丈は97.8cmで、裏側のボアの厚みも考えて選びたい一着です。
UC2F4302:ウールシルクとダウンを使ったロングコート
表地はウール90%・シルク10%で、光沢のあるロングコートです。中の充填物はダウン90%・フェザー10%、裏地はシルク100%。黒い表面の光沢に加えて、ダウン入りというつくりも特徴です。UC2F4302の公式仕様
サイズ2の公式着丈は104cm。同じサイズ2のUC2F4105より6.2cm長くなっています。どのあたりまで裾を落としたいかで選び分けられます。ダウン入りなので、中綿のないコートとは厚みや着用感も含めて比べたいところです。
US2E4192:the Shepherdのシェットランドウールジャケット
シェットランドウールのパッカリングジャケット。縫い目の表情、胸元の小さなモチーフ、前のタグ、内側のストライプが見えます。公式素材は表地ウール100%、裏地の区分がコットン100%とキュプラ100%。サイズ2の着丈は69.5cmです。US2E4192の公式仕様。
長いコートから雰囲気を変えたいときは、こうした丈のジャケットも候補になります。太い黒パンツを合わせれば上下の分量に差がつき、前を開けると内側のストライプも見せられます。
中古・アーカイブを探すときの確認点
- 年代と品番:コレクション名、発売年、復刻や協業の有無を照合。「アーカイブ」という言葉だけを年代の根拠にしない。
- 取り外せるパーツ:袖、襟、ベルト、フードなどが元の仕様どおり付属するか。ファスナーの開閉と、接続部の傷も確認する。
- 装飾と生地の端:ほつれや切りっぱなしが元の仕様か、使用による傷かを区別。商品の写真と販売店の説明を合わせて見る。
- プリントと裏地:色落ち、ひび、補修、裏地の破れ、品質表示の読める写真を確認。
- 実寸と形:サイズ番号だけで選ばず、着丈・身幅・肩幅・袖丈を手持ちの服と比べる。
- 販売条件:中古の状態区分、検品方針、付属品、返品条件を確認。画像やタグだけで真贋を保証できるわけではない。
長い服は数cmの丈の差でも、膝との位置関係やパンツの見える量が変わります。比較の仕方はジャケットの実寸を見るガイド、上下の分量はシルエットのガイドも参考になります。
楽天市場の掲載例:the Shepherdの中古ジャケット(広告)
Kindalに掲載されているのは、the Shepherd UNDERCOVERの中古M65タイプ(US1A4202)です。先ほどのUS2E4192やUNDERCOVER本体のロングジャケットとは別モデル。販売店の表記は黒・サイズ2・綿素材で、実寸は着丈71cm、肩幅53cm、身幅58cm、袖丈61cmです。
販売店によると、少々の着用感と色褪せがあり、付属品はありません。購入前には現物写真と実寸、最新の価格・在庫・返品条件をご確認ください。
日常着のどこに、違和感を残したいか
袖や裾を組み替える仕組み、日常着に加わる小さな装飾、黒いロング丈、the Shepherdの生地。UNDERCOVERには、好きになるきっかけがいくつもあります。気になった作品からシーズンをたどり、普段の服にも取り入れたい要素を探してみるのがよさそうです。
黒い服のロマンティックな雰囲気が気になったら、ANN DEMEULEMEESTERの紹介もどうぞ。布の動きと、服に加えられた仕掛け。それぞれの違いを楽しみながら読むのもおすすめです。
参照資料と画像について
歴史とラインはUNDERCOVER公式、作品の年代は公式コレクションと東京オペラシティ アートギャラリー、展示はVancouver Art Galleryとメトロポリタン美術館の資料を参照しました。商品仕様の出典は、本文にリンクした各品番の公式ページです。
作品写真2点は、写真ごとのCC BY-SA 4.0表示を確認した展示写真です。作者名、出典、ライセンス、トリミングの有無を各写真の下に記載しています。公式サイトの商品画像は、本文で仕様を確認するために参照し、転載していません。制作映像はUNDERCOVERが公開したVimeoの外部プレイヤーです。


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