
はじめに
今回ご紹介するのは、静けさと欠落、そして構築をテーマに服をつくり続けるブランド、NULLUS(ヌルス)。
表現としての「削ぎ落とし」はよくありますが、NULLUSはそれを単なるミニマリズムではなく、
**“欠落そのものを美しさとして見せる”**アプローチで展開しています。
まだあまり国内では知られていないかもしれませんが、SSENSEなどでも取り扱われており、
2025年以降じわじわと評価を集めている、要注目の新鋭ブランドです。
NULLUS(ヌルス)とは|“欠落”と“内省”のミニマリズム
**NULLUS(ヌルス)**は、中国・上海を拠点に活動するメンズウェアブランド。
ブランド名はラテン語で「無・ゼロ・存在しないもの」を意味し、
コンセプトからすでに哲学的な香りを漂わせています。
ミニマリズムやヴィンテージをベースにしながら、単に“省略する”のではなく、
**「意図的に欠けた形」「内向きに潜るようなデザイン」**を取り入れることで、
服に静かな緊張感と深みを持たせているのが特徴です。
デザイナーについて|詳細な素性は非公開
現時点では、デザイナー個人の名前や経歴は公式には明かされていません。
その匿名性もまた、NULLUSの“存在しないこと”を意味する哲学とリンクしており、
ブランド自体が個人を超えた概念的な装置として存在しているようにも感じられます。
ブランドの哲学|“flaw(欠落)”、“conceal(内包)”、“placid(静寂)”
NULLUSは3つのキーワードを掲げてブランドの思想を説明しています:
- flaw(欠落)
完全ではないこと。むしろ“壊れている”ような状態を愛する感覚。
服のパターンにもどこか不自然さや空白があり、それが“完成しきらない美”を生んでいます。 - conceal(内包)
目立たせない、隠す、静かに潜る。
カッティングやシルエットの中に、“言葉にされない構造”が潜んでいます。 - placid(静寂)
騒がしさの対極にある静けさ。素材や色数も最小限に抑えられ、
視覚的にも精神的にも“過剰にならない服”を提案しています。
このように、NULLUSは美しさの基準を真逆から再定義しようとするブランドです。
特徴的なアイテムたち|“ただのミニマル”ではない
NULLUSのアイテムは一見するとシンプルに見えますが、細部に深い構造性を感じさせます。
ヘッドウェア(ニットバラクラバ)
NULLUSらしい”ミニマルの中の静かな異形”を感じさせるバラクラバ(ヘッドウェア)。
ボリューム感のあるメランジニット素材で、首元から頭部まで包み込むような設計が特徴です。
フード部分は立体的な構築でありながら、無機質な佇まいを持ち、どこか儀式的なムードすら漂うアイテム。
目元をくり抜いたマスクライクなデザインは、防寒性だけでなく“アイデンティティの隠蔽と表出”を同時に叶えるような、NULLUS特有の「存在の曖昧さ」を体現しています。
▶ 素材感:
- 厚手のウール混ニット(推定)
- 毛足のある編み地で顔の輪郭をなめらかに覆う
▶ ディテール:
- フロントはクロスのような交差構造
- フード型バラクラバ+口元/目元カットアウト
- 肩口まで覆えるミディアム丈

「忍者なの?って言われそうやけど、これは“無の美学”。人の視線から解放されるって、ちょっと自由かも。」
X-Pocket Strap Shirt
NULLUSの2024年秋冬コレクションから登場したシャツ。
一見ベーシックなブラックシャツに見えながら、**左胸に施された“X状のストラップディテール”**が、強烈な違和感と存在感を放ちます。
このX型パーツは、ただの装飾に留まらず、“身体拘束”や“束縛の象徴”を思わせる抽象的モチーフ。
NULLUSが掲げる「不確かさ」「静寂」「抑圧と自由の境界」といったテーマを、静かに、しかし力強く語るデザインです。
▶ 特徴:
- ドロップショルダー気味のゆったりしたシルエット
- 表情のあるマットウール混素材
- X型ストラップポケットの存在が唯一無二
- 着丈長め・比翼ボタンなど細部もミニマル
購入先と価格帯
NULLUSのアイテムは以下のショップで購入可能です。
- SSENSE(エッセンス)
海外通販だが、日本語対応+関税込みで安心。 - SULLEN TOKYO(サレン トウキョウ)
日本国内のキーブティック。ルックも充実。
価格帯の目安(2025年現在):
アイテム | 価格帯(円) |
---|---|
パンツ | ¥30,000〜¥45,000 |
シャツ | ¥25,000〜¥40,000 |
アウター | ¥50,000〜¥80,000 |
こんな人におすすめ
NULLUSは、こんな人におすすめです。
- 無駄を削ぎ落とした服が好きだけど、どこか“影”や“歪み”が欲しい人
- COMOLIやKAPTAIN SUNSHINEは落ち着きすぎる…と感じる人
- モードではないが、哲学性のある服を探している人
まとめ|“無”の中に潜む豊かさを纏うという選択
NULLUSの服は、一見静かで無機質に見えながら、
どこかでこちらの感情を試すような余白や歪みを含んでいます。
それはまるで、完成しきらない詩のような存在。
空白やノイズを恐れず、“服の余白”を味わいたい人にとって、
NULLUSはきっと特別なブランドになるはずです。
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